いせや公園店

いせや

久しぶりに吉祥寺の老舗焼き鳥屋『いせや公園店』で昼飲みを楽しんだ。
ここの創業は古く、何と60年近くも人気を博し続けているという驚くべき店であり、特に地元民にとっては、井の頭公園と共に吉祥寺を語る上で欠かすことのできない存在となっている。大げさな表現ではなく、“ひとつの文化”と称して憚らないのだ。

昭和の香りがむんむんだった旧店舗。だが、数年前にリニューアルした現在の店舗も大衆居酒屋の雰囲気があってなかなか好ましい。それと店舗が変わってもリーズナブル且つシンプルなメニューが健在なのは嬉しいところだ。焼き鳥盛り合わせ(4本)320円と二合徳利600円でいい気分が味わえるのだから、ちょっと寄っていこうかという気分になる。そう、公園側に向いているカウンター席が空いていれば、意外や落ち着いたひと時も味わうことができるのだ。
この日は一番奥のカウンター席に陣取ることができ、黙々と煮込みや餃子を日本酒と共に賞味することができた。
少々酔いが回りはじめた頃、何気に店内を見回すと、満席の中に目立ったのは若い女性客の多さである。この手の飲み屋では想像のつかない客層だが、吉祥寺という街の特色、そして井の頭公園に面するという好立地が影響しているのかもしれない。何れにしても下町のコテコテ酒場とはひと味違うところが“いせや”っぽくていい。

胃部内視鏡検査・にしくぼ診療所

1月23日(月)。生涯4度目となる胃部内視鏡検査を行なってきた。
実は今回、再検査ではなく最初から健康診断のメニューへと組み入れてみたのだ。
何故かと言えば、昨年の健康診断で胃のポリープを指摘された際に、

「次回からバリウム検査はキャンセルして下さい。間違いなくこのポリープは毎回写って再検査になりますよ」
「やはりそうですか」
「健康保険が利きますから、年に一度はこうして内視鏡で診ていきましょう」

と、担当医からアドバイスを受けたからだ。

健康診断を行なったところは『にしくぼ診療所』。これまで内視鏡検査や腎臓結石やらでお世話になっている武蔵野陽和会病院の“健康診断専門施設”である。
さすがに専門施設だけあって、受付から待合室に至るエリアは、天井が高く周囲は総ガラス張りで明るく、清潔感と共にリラックスできる雰囲気に溢れている。この辺は明らかに一般的な病院とは異なる演出が感じ取れ、検査への抵抗感を押さえる工夫を各所で見ることができる。

身長・体重測定、視力・聴力検査から始まり、心電図、胸部レントゲン、血液検査が終わると、最後は胃部内視鏡検査を待つのみとなった。4度目と言えどもやはり内視鏡検査前は緊張感が高まるもので、血圧測定でも145~85と高めの数値が出てきた。普段は130~80ほどだから、やはり幾ばくかのビビリは感じているのだろう。

「それではおかけになってお待ちください」

いよいよである。
間もなくすると、胃内部の泡を消す薬とアイスキャンディー状の麻酔薬を渡された。麻酔が効きだす10分~15分後には処置室へ呼ばれる筈だ。
それにしてもこのアイスキャンディー、回を重ねるごとに効き目が低下してくるように感じるが、これは慣れなのか?!
試しに人差し指を喉チンコの奥へ入れてみたが、素直におえっときた。
実に不安である。

「どうぞお入りください」

恐る恐るベッドへ腰かけると、笑顔と共に話しかけてきた先生は男性で、しかも2度目の時と同じ方である。もしも先回の女医さんだったらどうしようかと、内心は戦々恐々だったのだ。

「それでは喉に麻酔をかけますね」
「先生、できれば多めにお願いします」

キシロカインスプレーである。

「マウスピースを噛んでください」

挿入開始だ。

「大きく息を吸って2~3秒止めて、ゆっくり吐いたらまた大きく息を吸ってを繰り返しましょう」

内視鏡が喉を通過する一瞬はさすがにおえっときたが、その後は先ほどから必死に行っている深呼吸のおかげか、物理的にも気分的にもずいぶんと楽である。

「胃に入る時、ちょっと苦しいかもしれませんよ」

と言われたが、それほどでもない。時々薄目を開いてモニターへ目をやるが、素人目で見て胃の内部はきれいに感じる。

「はい、空気を入れますね~」

胃を膨れさせて観察しやすくするのだろうが、これも何も感じない。
感じるのはやはり喉周りだ。内視鏡が前後に動くとおえっが走る。但し、今回は先生のテクニックが上々なのか、その度合いは昨年のような涙ボロボロの連続にはならない。

「終了ですので抜いていきます」

ホッとする一瞬である。

「お疲れさまでした。噴門がやや緩くなているので、食道下部が少々荒れていますかね」

これは先回もその前でも指摘されている。歳として諦めるか、対策を講じるか、、、

「それと胃の上部に荒れた跡があります」

それほど重い症状を感じたことはなかったので、これにはびっくり。
胃は僅かなストレスでもダメージを受けると言われているので、もっと意識していたわってやらねば。

「一度ピロリ菌の検査をやってもいいでしょうね」

中年族の70~80%に感染しているというピロリ菌。こいつが暴れ出すと胃粘膜を荒らし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こすきっかけを作ってしまうと言う。
次回の内視鏡検査結果如何では、考えていいかもしれない。
さっ、あとは検査結果を待つのみか、、、

若い頃・デニーズ時代 24

人事部・本田さんによる面接試験を経て、めでたくマネージャー昇格試験を通過した私は、あまりの浮かれ気分に、槇のことなど、もうどうでもよくなっていた。
そんな中、やっこさん、場の雰囲気を察して、近い将来同じ職位に追いつかれるとでも思ったのだろう、私への態度が急に素っ気なくなってきた。
何かにつけて「俺とお前が組んだら…」と始まる、あの嫌みったらしい馬鹿話しが、手の平を返すように出なくなり、話しかけてくる内容も事務的なものばかりへと変わった。

ー まっ、その内お前を使ってやるさ。

UMITへの目処が立つと、仕事への目線は益々マネージャー寄りに動いた。
UM(ユニットマネージャー・店長)にとって売り上げ目標の達成は当然の使命だが、店独自の広告宣伝や他業種とのタイアップ等々は当然ながら全て御法度である。
では売上はどの様に管理していくのか?
それは新入社員研修で勉強した【チェーンストア理論】の中に答えがあった。
列記すると、
< 事業戦略、商品開発、調達、人事・財務・管理などの中枢的機能を本部へ集中させ、店舗現場はオペレーションに専念することで最大の運営効率を挙げ、同時にコストダウンを可能とする考え方である。これを可能ならしめているのは3Sの手法である。3Sとは、標準化(standardization), 単純化(simplification),専門化又は分業化(specialization)の3つのSを指す。>
となる。
3Sのひとつ標準化はマニュアル化を意味し、デニーズに於る全ての作業を分かり易く明文化してある。また、食材原価の要であるポーションコントロールに必要な盛り付け量は、付け合わせに使うほうれん草ソテーやフレンチフライドポテトに至るまで数値化がなされている。

「卵料理にはカットバターを使うんだよ」
「あ、はい、わかりました」

新人のキッチンヘルプが、フライパンへ溶かしバターを入れようとしている。
溶かしバターはトースト用、調理にはカットバターを用いなければならない。
ハンバーグを例に挙げれば、解凍時間、片面焼き時間、調理器具チャーブロイラーの温度、マイクロウェーブオーブン(略して“マイクロ” ⇒ 電子レンジ)の加熱時間、そして最後にかけるソースの量等々、誰が調理しても同じ味が出せるようにマニュアル化されている。
もちろんフロント業務にも徹底した“決まり”がある。
お客様が来店したら「いらっしゃいませデニーズへようこそ」とお迎えし、お帰りになるときは「ありがとうございました。またお越し下さい」と言わなければならない。この他にも「はい、かしこまりました」、「少々お待ち下さい」と挨拶(グリーティング)も統一されている。単純な「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」や、「わかりました」、「ちょっとお待ち下さい」などの既定外は全てNGだ。
こうしたありとあらゆる行為に対する手引きがマニュアル化されていて、これを順守することにより、デニーズのブランドを訴求することができ、必然的に売上が上がっていくというわけだ。

「木代さ~ん」

んっ、岡田久美子か。

「はいはい、今行くよ」
「検品お願いしま~す」

八百屋がレタスを持ってきたのだろう。
午前の納品時、検品してみるとレタスが痩せてスカスカだったのだ。同じ段ボール1ケースでも、使える部分に大きな差が出てしまい、これがフードコスト(食材原価)に跳ね返る。酷いときには品切れが起きることさえあるのだ。

「どうもすんませんね」

新たな箱を開けると、ずっしりと重くみずみずしいレタスがぎっしりと詰まっている。

「最初からこのレベルを持ってきてくれなきゃ」
「へへっ、今、露地物に頼っちゃってんで難しいんですよ」

検品の他、フードコストコントロールに必要なのがトラッシュカン(ゴミ箱)チェックだ。
安全期間を過ぎて破棄した食材、オーダーミス、野菜カットの状況等々、クック達が出している無駄のレベルを常時観察することにより、個々の仕事へのアドバイスが進み、同時に正常なコストへ持っていくことができるのだ。

全てのマネージャーは常に実務を勉強し続け、それを全てのスタッフへ伝え、正確に実行させるために尽力しなければならない。
デニーズジャパンが嘱望するマネージメントレベルとは、“多くの優れたスタッフを育てられる者”に尽きるのだ。

写真好きな中年男の独り言