エレキバンド・その5・“入門者泣かせ”

SSHBHCNH1母に買ってもらったマイギターは、響きの良いポップな音が自慢だった。
実は手に入れた後、早々に弦の交換を行ったのだ。
元々はガットギターなので、標準で張ってあったのはナイロン弦。これはこれでとても良い音色がするが、私が求めているポピュラーサウンドにはやや向いていない。
本来ならばエレキを手に入れ、ピックで格好良くジャラーンとやりたいところなので、せめて弦だけでもスチール製に交換してソリッドな音色を出したかったのだ。
ギターの一般常識からすれば、これは邪道であり、肝心のギター本体にも悪影響を与えてしまうらしいが、あの頃の自分には、上手になろう! 楽しもう! しか頭になかったし、何より若さならではの勢いがあった。

中学生の小遣いでも買えるギター弦。しかし、この交換は価格以上の結果を生んだ。
好きなポップスのコードを鳴らせば、より本物に近い音色が出るようになり、ベンチャーズのメロディーをリードで刻めば、けっこうなエレキ風サウンドも楽しめる。
そしてスチール弦への変更は、ギターピック選びにも拘りを与えたようで、形状、材質、固さによって弾き具合が変わり、同時に発する音も違ってくることが興味深かった。
ピックは弦より更に安い買い物なので、これぞと思うものは見逃すことなく買って試してみた。

「ほら、持ってきたよ」

クラスメイトのOが、兄貴から譲ってもらったというフォークギターを家まで持ってきてくれた。
色々な友達とギターの話をしてみると、意外や兄弟や親父さんあたりが所有しているケースが多く、楽器屋での試し弾きは年齢的に敷居が高かったし、買わないのが分かっていてあれもこれもと頼めないから、こうして友達頼みで弾かせて貰えることはとても嬉しいのだ。
そしてここでも色々な発見があった。
早速Oのギターを持ってみると、

ー ずいぶんとネックが細いし、弦高も低くて弾きやすい!

まったく驚きである。

「え~、、ガビンのギター、えらく弾き辛いな~」

互いのギターを交換して弾いていたOから率直な感想が飛び出した。
マイギターはネックが蒲鉾断面で恐ろしく太く、指板も幅が広く弦高は激高だ。“キング・オブ・入門者泣かせ”のタフな楽器なのだ。
しかしこれで練習したおかげで、どんなギターを抱えても素早く確実にコードを押さえられ、指は踊るように動かすことができる。もちろんマイギターにも長所はあった。それは音色が抜群に良いこと。これほど広がりが良くて豊かな音が出るギターには、ここまでの段階でお目に掛かったことはない。これで5,000円なのだから、ギターの価値は実に微妙である。

Oのギターを弾いているうちに、その弾きやすさを醸し出している新たなポイントに気が付いた。
指板がマイギターのように真っ平らではなく、僅かだが弧を描いているのだ。
単純にネックを細くすれば弦間が狭くなるだけで、指を立て気味にしないと隣の弦に当たりやすくなる。その点、指板を弧にすれば握りは細くても、指板の面積を大きくすることが可能なわけだ。
さすがにポピュラー音楽の根底を支えている楽器だけあって、長い音楽史の中、数々のプレヤーやビルダーによって正道正常な進化を遂げている。
この形状だとハイポジションが握りやすく、コードも確実に押さえられ容易に音が出せる。
なんとすばらしいことか!


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