高水三山・晩秋

 十一月二十五日(金)。五年ぶりとなる高水三山を歩いてきた。
 快晴、無風と、これ以上望めないコンディション下の山歩きはやはり楽しい。ただ、相変わらず右股関節の調子が悪く、若干の痛みやハリのような違和感を終始覚え、不安は募る。やはり一度医者に診てもらう必要がありそうだ。加齢のせいにはしたくないが、ちょっと萎えた。

 七時一分発中央線特快高尾行へ乗り込んだ。そう、この頃電車利用率が上がってきた。なぜなら使ってみるとこれが案外楽だから。山歩きをすれば当然疲れるので、車だと帰りがやや辛い。それともう一つ。下山後にアルコールを楽しめること。
 先日の秋川ハイキングの際に、購入後ほとんど使うことのなかったTHERMOSのポケットマグに、少量の氷と麦焼酎を満たして持っていくと、これがGoo。ギンギンに冷えた焼酎オンザロックは、疲れた体に最高の喉越しと刺激を与えてくれたのだ。量も150mlなので変に酔っぱらうこともなく、これは一発で癖になった。そんなこともあり、刈寄山や麻生山等々、車でなければ不便なところは別として、今後は積極的に電車・バスを使おうと思っている。

 森は晩秋の様相を呈していた。紅葉はとうに過ぎ去り、冬枯れと称してもおかしくない。山道はどこも枯葉が積み重なり、昨夜の雨で恐ろしく滑りやすくなっている。土が露出している急斜面は、当然濡れた落ち葉以上にスリッピー。特に下山時は「おっと!」の連発になった。

 高水三山コースの中で最たる絶景ポイントは岩茸石山の山頂。正面には奥武蔵の山々、右手には都心部のビル群までがはっきりと見渡せる。空気はカラッとしていてその冷たさは冬を感じさせたが、今日は嘘のような無風。目の前のすすきも微動だにしない。そこに燦燦と降り注ぐ暖かい陽光も相まり、食事の準備をしているうちは上着もいらなかったほど。
 以前、山トモのHさんと大塚山へ行ったとき、彼女、うまそうに“カレーメシ”を食していた。カップ麺に少々飽きがきていたので、OKストアーに行ったついでに一つ買っておいたのだ。そのカレーメシにお湯を注ぎ、待つこと五分。ぐるぐるとかき混ぜているとだんだんととろみが出てきて、いい香りも漂い始めた。そろそろ頃合いだろうと食べようとすると、ふと背後に視線を感じた。振り返ってみると小学生中学年ほどの女の子二人が立っているではないか。恐らく彼女たちにしてもカレーメシは初めて見る“食べ物”で、大いに興味ありといったところか。目線が合うと、ばつが悪かったか、引率者と思しき男性のいるベンチへと帰っていった。

 ふむ。なかなかいける。乾燥した米粒を見たときにはどうなるかなと心配だったが、これはれっきとした“カレー”。温かいカレーライスを、晩秋の山頂でいただけるとは、ちょっと幸せ気分。残ったカロリーメイトとチョコクロワッサンを食べ終えると、いい感じで腹が膨らんだ。気持ちも体も落ち着いてのだろう、若干眠気も……

 人気の高水三山も今日はハイカーの姿が少なく、こうして絶景を前に静かなひと時を過ごすことができた。これも山歩きの楽しみであり、これがあるから山への興味は尽きない。アルプスや南八ヶ岳でなくともいい。都会を抜け出し、大自然の懐を満喫するには、奥多摩、奥秩父、十二分な山塊なのだ。

 P.S
 惣岳山からJR御嶽へ下る途中に、沢井へ向かう道標を発見。次回はこのルートを辿ってみようと思う。なにせJR御嶽までの下りはずっと変化のない樹林帯歩きだし、木の根と大きなステップが多く、おまけにゴール目前にアップダウンが三か所も待ち構えている。簡単に言えば、単に辛いだけ。


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