竜姿の滝

コロナ騒動勃発以来、外出自粛だの越境NGだの、撮影や山歩きの楽しみはことごとくお預け状態となっているが、最近手に入れた<SIGMA24-105 f4>が「使ってみればぁ~」と日々誘ってくるので、さすがに試写をしたい欲求は爆発寸前になっていた。
おまけに久しく東京から出ていないストレスも相まって、8月26日(水)の早朝3時、POLOに撮影機材を乗せると、山中湖目指して出発した。

中央道は相模湖ICで降りて、漆黒の闇に包まれるR76を恐る恐る南下。久しく走った後、道志みちに入ると街路灯の明かりに助けられ、緊迫感ある走りが終わりを告げたことを実感。ホッとする一瞬である。
道志みちでもこの時間帯だと通行量は皆無に等しいので、常時ハイビームを点灯させてしっかりと視界を確保。ひたすら山中湖を目指した。それにしても起床が2時半と早かったので、最初はやや頭がボーっとしていたが、この辺りでやっと覚醒してきたようだ。

早朝の山中湖は濃い霧に包まれていた。
これまで富士山の撮影をしようと山中湖に訪れたのは、冠雪した季節が殆どだったので、これほど盛大な霧に出くわしたことは一度もなく、富士山はおろか対岸も全く見通せない状況は全くの予想外。
天気ばかりはどうにもならないので、ジェットスキー乗り場の脇にPOLOを駐車させ、とりあえず遊歩道からの撮影を試みた。
しかし半袖に7分丈パンツといういで立ちは、最初は涼しくて気持ちが良かったが、15分もするとしんしんと冷えだしたので、早々に見切りをつけることにした。ちなみに到着した時の外気温センサーは18℃を示していた。しかし灼熱地獄の毎日を考えると、こっちの方がまだましか。
気が付くと右方から徐々に近づいてきた白鳥が、私の存在を無視するかの如く、目前の湖面をすべるように横切っていった。

今回の目的は朝焼けの富士山と滑沢渓谷の“竜姿の滝”と決めてきたが、こんな状況なので富士山は諦め、先ずは鳴り出したお腹を鎮めるために、三島まで降りて朝食を取ることにした。いつものデニーズ三島北店がいいだろう。
話しはちょっとそれるが、実は数日前、TVを観ながら晩酌してたら、うっかりと上唇の内側を噛んでしまい、それが口内炎へと悪化していたのだ。何もしなければ痛みもそれほど感じないが、飲食の際はひと苦労である。

「おまたせいたしました」

注文したスクランブルセットのサラダドレッシングが強烈にしみて涙。次はスクランブルエッグにかけたトマトケチャップに反応してまたまた涙。そしてかなり冷めたと思われたコーヒーがとどめを刺した。

ー いててて、、、

こんなに苦しい朝食は久々だ。
以前、4年間ほど総合サプリを服用していた時期があり、その間は口の中を噛んでも、傷が口内炎になるなんてことは一度もなかった。ところが1年ほど前、“サプリはほとんど効果なし”の情報を知ってきっぱりとやめた。
すると今回のありさまである。
口内炎防止のためだけにサプリ復活はあり得ないが、やはり何かしらの栄養素が不足していることは間違いなさそうだ。

滑沢渓谷の入口にある木材置き場の脇にPOLOを停め、三脚を取り出し広げていると、後から来た白いランクルが土埃を上げながら渓谷へと下って行った。運転者は年の頃50代後半と思しき、がっしりした感じのおっさんだった。急かされるように長靴に履き替え、続いて私も渓流に向かって坂を下っていく。
さて、本谷川を渡る橋まできても、さきほどのランクルが見当たらない。大概の場合、車は橋を渡った正面脇に置駐車するのだが、おっさんは一体どこへ行ったのだろう。

道なりに竜姿の滝方面へ向かっていくと、なんだ、いるではないか。
左カーブ先の路肩にどでかいランクルの姿である。反射的に川へ視線を向けると、年配カップルの姿が目に飛び込んだ。よく見ればおっさん一人が膝まで川に浸かって、何やらはしゃいでいる。そして悪いことに、おばさんの足元に広げたレジャーシートの上には食べ物や飲み物が広がっているではないか。あそこへ陣取られては滝の撮影は到底不可能。しかし富士山の件もあるので、ここは引くわけにはいかない。しょうがないので他の撮影ポイントを探しつつ、年配カップルが立ち去るのを待つことにした。

今回の撮影行はSIGMA24-105 F4の試写がメインだが、その他に2つの新しい武器のテストも兼ねていた。それは可変式NDフィルターとGNDフィルター(ハーフND)である。
以前からNDは3~4枚ほど持ってはいたが、全て72mm以下なので、SIGMAの82mmには使えない。用途に応じて82mm用をまた何枚か購入すればいいのだが、そうなれば予算はかなり張る。可変NDに関しては性能的にいまいちとの声を聞きつつも、背に腹は代えられぬ懐事情により入手を決断。そこそこ使えればND2から400までの減光が一枚で事足りるのだから凄くありがたい商品なのだ。
使ってみての感想は、ずばり“便利”の一言。
絞り優先でF11、ISOは100で固定し、あとはPLフィルターのように枠をくるくると回せば、望むシャッタースピードが得られるというもの。心配された色彩に関しては、帰宅してPCで確認しても全く問題のないことが判明した。しかもステップアップリングがあれば手持ちのレンズ群全てに使えるから利便性はすこぶる高い。これこそ“大は小を兼ねる”の真骨頂だ。
GNDも単に部分減光という働きだけではなく、絵全体の雰囲気を変える面白い効果もあって、今後は使い込む頻度が高まりそうだ。一応、レンズへの取付アダプターも購入したが、やってみると手持ちでも十分対応できるし、むしろ即応性があってシャッターチャンスを逃さない。但、GNDの幅が84mmなので、直径82mmのレンズだとかなりぎりぎり。小遣いと相談して次は100mm以上のものを手に入れようかと思っている。

30~40分ほどして滝へ戻ってくると、既にランクルの姿はない。
さっそく誰もいない滝の真ん前に陣取ってセットアップを始めた。今の今まで歩き回っていたから、かなりの大汗をかいていたのだが、渓谷のつくり出す清涼感満点の空気に包まれた途端、瞬く間に汗が引き始めたのだ。
酷暑の続く今の季節には正真正銘のオアシス。滝壺の傍にサマーベッドでも置けば、1~2時間の爆睡は間違いない。まじめに来年は虫よけスプレー持参で一度トライしてみたいものである。

しかし伊豆に遠征しての撮影は、やっぱり楽しいに尽きる。大好きな伊豆は、そもそも西久保日記をスタートする際のテーマでもあった。日本には他にも魅力的なところがいくらでもあるだろうが、子供のころから慣れ親しんだ伊豆でなければ、このような癒された感覚に浸ることはできないと思う。
秋の紅葉シーズンまでもう少し。SIGMAと2つの武器を駆使して、嫌っていうほど切り取っていくつもりだ。


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