落ち葉、ざくっざくっ

2月27日(木)。新緑には程遠い冬枯れ真っ只中な山中に、開花の一輪を探すのは難しい。
生き物の蠢きも感じられず、只々落葉をざくっざくっと踏みしめながら静かな山道を行く。
遥拝殿脇にある登山口から今熊神社本堂まではずっと上りになるので、ワークシャツにフリースといった軽装でも汗が滲む。しかしこの汗ばんだ背中周りに北風が当たれば、急速に体温を奪い始める。そう、今日は風が冷たい。
すかさずウィンドブレーカーを取り出し羽織ったら、今度は上半身が蒸れて、これまで以上に汗が吹き出てきた。何とも調整が難しいが、これがゴアテックス生地だったらもうちょっと何とかなっただろうに。

今回は本年一発目の山歩きである。体が出来ていないので、これまで以上に意識して歩幅を狭めて歩いてみた。まるで老人のようにだ。歩行速度はずいぶん落ちるが、その分心肺的にも筋力的にも負担は小さい。ステップ越えも、大腿筋は意識して使わずに、膝の真上に上半身を被せるよう体重移動を行う。

それにしても静かである。普段だと駐車場と今熊神社の間には若干名のハイカーを見かけるが、今日はコースの後半に差し掛かっても人影が全く無い。
淡々と歩みを進め、刈寄山頂上までもうちょっとのところまで来た時、南側が広範囲に伐採されて展望のきくポイントで男性ハイカーに遭遇。高倍率ズームのカメラを抱えて遠くの山々を撮影している。年齢は40歳前後だろうか、如何にも山慣れしている雰囲気が滲み出ている。

「こんにちは」

ザックを下ろして私もV2を取り出した。

「どちらか上がってきたんですか」
「刈寄林道です」

聞けば、なんちゃらとか言う白くて小さな花を探しているとのことで、今頃、高尾山界隈では多く見られる種類だが、この界隈にも僅かだが目撃情報があり、だったら敢えてこちらの花を見つけ出してカメラに収めようという算段らしい。
彼は山々に咲く花に詳しく、おまけにホームエリアは私と同様、奥多摩、奥秩父。よって自然と会話は弾み、気がつけば半時間が経過していた。しかしこんな出会いも山歩きの愉しみのひとつ。そして見聞の広がりは更に山への興味へと繋がっていくものである。


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