若い頃・デニーズ時代 34

AMまで昇格すると、やはりMotivationは上がり、以前にも増して広い視野で物事を見ようとしている自分がいた。店のオペレーションはもちろんのこと、競合他社である、「すかいらーく」や「ロイヤルホスト」の動きにもやたらと目が行くのだ。
そのすかいらーくとロイヤルホスト。いずれも自宅から歩いてすぐのところにあったので、入社前から良く利用していた。ところが、今こうしてデニーズのマネージャーになって利用してみると、目線が変わったのか、今まで見えなかった様々なことが見え始めてきた。

先ずは寛ごうとテーブルについても、ウエイトレスコールの反応性、笑顔、バッシング、ディッシュアップタイム等々が気になり、落ち着けない。
料理が来れば、盛り付け、味付け、焼き具合をチェックしないと食事が始まらないし、トイレに行っても、クリーンリネスのレベルや、水石鹸、ペーパータオルの補充量にまで目が行ってしまう。
しまいには、「トイレの清潔度はやっぱりデニーズが一番だな」などとほくそ笑んだりするから恐ろしい。
いいか悪いかは別として、これだけ瞬時にチェックできる目を養えたのも、デニーズマンとして一生懸命頑張ってきた賜物だろう。

さて、ファミリーレストランにとってメインとなるメニューを上げると、それは迷わずハンバーグ。
老若男女問わず好まれるし、特に子供がいるファミリー客には必須のアイテムだ。ソースやトッピング、そして盛り合わせを工夫すれば、バリエーションが簡単に広がっていくところもGoo。
その肝心な一品、デニーズのハンバーグだが、これがどうも品質の面で競合他社に後れを取っているように思えてならないのだ。
デニーズのハンバーグメニューには、基本的にハンバーグ、和風ハンバーグ、イタリアンハンバーグの三つがあるが、和風とイタリアンはソースが非常によくできていて、一般的な日本人の舌には絶対に好まれる味わいを持っている。しかしノーマルのハンバーグにかかるソースは、競合のどこと比較しても劣っていることは否めない。そのソースとは洋食の王道デミグラスソースなのだが、コクやうま味がまったく感じられず、エンプロイメニューを毎度食しているスタッフの評価にもあらわれている。

「エンプロイだったらマルワ(和風ハンバーグのオーダリングコード)でしょ」

< 洋食屋のレベルはデミグラスを食すれば分かる >
万人の知るところである。なのに、この不味いソースをハンバーグのみならず、ホットローストビーフサンドや高価なサーロインステーキにも使っているのだから恐ろしくなる。
そして、デニーズのハンバーグはデミグラスソースだけではなく、肝心な肉質も他社と比較してどうも今一歩なところがあるのだ。
あくまでも主観だが、食して一般受けするのはすかいらーく、肉の風味と食感のバランスがいい。次に来るのはロイヤルホストだろう。
デニーズのと言えば、これはクッキングレベルの差かもしれないが、出来上がりにムラが多く、<これぞデニーズのハンバーグ!>とアピールできるものにありつけるのは、いいところ6割だ。
デニーズのハンバーグだけが特殊な調理方法を取っているならまだしも、いつ何時オーダーしても、すかいらーくのハンバーグは均一な仕上がりでディッシュアップされ、不満を感じたことはない。
テストキッチンでいくら大層な商品が開発されたとしても、お客様へサービスされる際に、試作と同様の品質が保たれないなら意味がないことであり、この点は大いに研究されるべきだ。
商品部は現場を掌握している筈だし、放置されるには余りにも問題が大きすぎる。

ハンバーグの調理法は、マニュアル通りに解凍されたハンバーグをチャーブロイラーで両面を順次に焼き、最後はマイクロ(業務用電子レンジ)で仕上げるのだが、この方法はあくまでも1個のハンバーグを対象として作成されているので、グループ客でハンバーグメニューが同時に10個入ってきたときは、マイクロに二つ三つを同時に入れて調理しなければならない。しかしマニュアルにその際の調理時間の記載はなく、クックの勘のみに頼っているのが現実だ。これにより、オーバークック、生焼けなどが発生し、ディッシュアップは遅れ、当然ながら商材ロスも生じてしまう。恐らく競合他社の調理方法もそれほど変わらないと思うのに、この差はなぜ出るのだろうか。
そしてハンバーグに続く難点がスパゲティ。当時はミートソースのみだったが、この麺の品質がこれまた驚きだ。
基本的にスパゲティーと言われる食材は、デュールセモリナ粉100%でできているものだが、恥ずかしいかな、デニーズの麺はうどんに近い。しかもボイルはツーオーダーではなく、あらかじめ茹でたものをサラダオイルと絡めてホットテーブルにキープしておくのだ。よって注文が入ってからのサービスはメニュー中最もクイック。麺をチャイナキャップに入れ、湯煎したらプレートに盛り、そこへミートソースをかけてパセボンを散らせば、はい出来上がり。ピーク時の定番エンプロイメニューで、私もよく食したものだ。
それにしても、アルデンテはおろか、全くコシのないパスタをミートソーススパゲティと称し提供して良いものか、大いに疑問である。

ここまで述べると、デニーズメニューはすべて悪かろうとの印象を持たれてしまうが、そこはどっこい、デニーズには他を圧倒するおすすめメニューが盛りだくさんなのだ。
筆頭は何と言ってもハンバーガー。主役のミートパティーは食感風味共々他を圧倒するレベルにあり、マクドナルドを代表とするファーストフードのハンバーガー群に対して、本場アメリカの手作りハンバーガーというポジションをアピールしている。中でもデニーズコンボは正に看板メニューであり、競合他社にはないピュアアメリカを味わえるおすすめの一品だ。
そして、シンプルなメニューだが、サンドイッチ関連もレベルが高い。デニーズで使うパンは、栄喜堂という業者向けパン製造会社から仕入れているが、明らかにここのパンは風味豊かであり、出来立てのホワイト(食パン)、ディナーロール、バンズ、ライブレッドがデイリーで入荷してくる。これを使った品々なので、どれも他社を引き離すグレードとなるわけだ。
2枚のホワイトの片面にバターを塗り、グリル板に乗せる。同時にスライスチーズをトッピングし、溶け始めたら、この2枚を合わせる。とても簡単に作れるが、このチーズサンドは一度食したら絶対に忘れることはないだろう。


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