
来る日も来る日も続く、高い気温と湿度。朝からエアコンをつけたり、市営プールで涼んだり、はたまた大根おろしをたっぷり入れた冷たい素麺を食べたりと、考えうる涼はそこそこ取っているつもりだが、如何せん、体の奥底に溜まり続ける疲れはいかんともしがたく、消沈すること屡な昨今である。
「ひさびさに温泉いかない?」
おそらく女房も疲れがたまっているのだろう。お互い歳を取った。
「いいね、どこいく?」
「温泉巡りのとき、お財布忘れてご飯が食べられなかったとこ」
「数馬の湯だよ」

七月十五日(火)。日帰り入浴で温泉効果を得られるかは微妙だが、湯に浸かることは血行を向上させ、新陳代謝も図れるはず。今抱えている疲労も、もしかすると低減できるかもしれない。そんなことを女房と話しながらPOLOを走らせた。
数馬の湯はぬるめの40℃。ジェットバブルに腰を当てると、すぐにリラックスできて、いつの間にか瞼が沈んでくる。実にいい気分だ。
熱めの湯だと頻繁に出たり入ったりを繰り返すが、ここは長湯になりがち。そろそろ上がろうかと手すりにつかまり踏み出すと、思わぬ立ち眩みが襲ってきた。しかも、これまであまり感じたことのない強力なものだ。手すりがなかったら倒れていたかもしれない。湯船の縁に頭でもぶつけたら、それこそ一巻の終わりである。




「いいお湯だった~」
「浸かりすぎて、なんだか疲れが出てきたよ」
「それって脱水症状じゃない」
食堂へ行って、とにかく冷たい水を立て続けに二杯飲んだ。
「食券おあずかりしま~す」
ざるそばと舞茸天ぷらの食券をそれぞれ二枚手渡した。冷たい水が胃腸を刺激したのか、急速に食欲がわいてきた。
そばは大盛りにしたので、つゆも二つ付いている。舞茸天ぷらからいただくと、身が厚くてジューシー。さすが“数馬もの”だ、ひと味違う。
「パパはもう入らない?」
「おれはいいや。疲れが増しそうだから」
これ以上ぐったりすると、帰りの運転に支障が出そうだ。なんだか情けない。特別に体を使っているわけでもないのに、なかなか疲れが抜けないとは…
お土産の支払いをしていると、
「パパ、これ」
「おっ、また始めたんだ、スタンプラリー」
こいつを利用して、温泉に浸かる機会を増やそうと思う。少しでも疲労回復につながればこの上ない。