
酒飲みの私は、毎夕の晩酌がなによりの楽しみになっている。
好んで飲むのは麦焼酎と日本酒。夏は焼酎のソーダ割をロンググラスに一杯と、冷酒を一合強ほど。冬になると焼酎はお湯割り、日本酒は燗へと変わる。焼酎をいただく際は、夏冬問わず柑橘系の果汁を入れることが多いが、最も好みなのは女房の友人からいただく“花柚子”。普通の柚子より一回り小さく、一杯分に一個と、素晴らしい香りと共に使い勝手がいい。ただ、あくまでも年に一度のいただき物なので、常時味わえるものではない。よってまじめな話、苗木を手に入れ、自宅の庭で収穫できるところまで育ててみようかと考えている。
そんなことで通年使っているのは、シークワーサーかレモンの瓶詰果汁だ。
「紀ノ国屋行ってくるね」
「駅の店?」
「ああ」
「だったらついでにご飯食べに行かない?」
オーガニックレモン果汁一本が、突如として“女房とランチ”に化けた。

三鷹南口駅前にある【福家】。とんかつの老舗である。
ランチタイムはいつ行っても満席なので、待つ覚悟が必要。ところがこの日はたまたまテーブル席が空き、すんなり腰を据えることができた。
「とんかつ定食とヒレかつ定食で」
「はい、お待ちください」
十分少々で運ばれてきた揚がりたてのカツからは、たまらなくいい香りがわき立っている。ここのとんかつは奇天烈一切なしのザ・スタンダード。安心して食せるところが最大のポイントであり、リピーターが多いのも頷ける。