2025年・初詣

 昨年は初詣を端折った。
「なにも混んでる三が日に行かなくてもいいんじゃないの」
 このひとことで、夫婦間にあった“初詣”の二文字はいとも簡単に消滅したのだ。
 昨今、なにがなんでも初詣という時代ではないし、年賀状が激減している現状を考えれば、もはや年中行事すべてに対し、人々の心の中に昔のような意識は生じない。
 新しい年神様を皆で迎えて祝うという考えは、かなり希薄になっているだろうし、我々年配者でさえそうなのだから、若い人たちにとって正月は、シンプルに“一月”なのだ。

 十年ほど前から初詣は浅草の浅草寺に定着している。
 地元にも立派な神社はあるが、我が家は初詣をレジャー若しくはイベントと捉えているので、多少遠くても恐ろしいほどの参拝者の波にのまれつつ、きらびやかな仲見世をひやかしたいと欲っしてしまう。
 賽銭を投げ、手を合わせる。出口へときびすを返せば、目線は昼飯処探しに切り替わった。
「おっ、そこの店、並んでないよ」
「入っちゃおうか」
 コロナ前と比べると浅草寺への初詣の人波は目に見えて減っている。仲見世だけはまだまだ活況に溢れているが、その後街中へ出てみると普段とそれほど変わらなく、感覚的には10%減といったところか。
「ねえ、この店、一昨年も来てない?」
「おれもそう思ったよ」
 互いに苦笑いが出た。
 一度腰を据えたので、出ていくわけにはいかないが、たしかハンバーグはグリルした感じがなくて、レトルト以下だったし、カツカレーのルーは風味に乏しく辛さもないなんとも表現しがたい味だった。だからこの二品は避けた。
「すいません。カツ丼と豚カツ定食おねがいします」
 記憶をたどれば、カツカレーの豚カツだけは上々だったのだ。


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