12月20日(金)。義母が心臓血管のカテーテル治療を行うために入院した。十年前に心筋梗塞で倒れてから今回で三回目の施術である。高齢で一人住まいという不安要素もあったので、見舞いといっしょに担当医から詳細を聞くために、女房と二人で沼津へ行ってきた。
東名高速でちょっとした渋滞に嵌りはしたが、約束した11時には到着。一年ぶりに会った義母はずいぶんと元気そうだったのでひとまず安心。ただ、医師の説明によると、血管の詰まりが何か所か見つかっていて、今回の施術以降、あと二回行う必要があるとのこと。おおよそ30分の説明が終わり、次回入院日を決めると、はるばる沼津まで来たので港でランチにしようと向った。
「やっぱり沼津は暖かいな」
遠州灘は温暖だ。夏も東京ほどの過酷な暑さがなく、高齢者にとっては間違いなく住みやすい。
港は相変わらず多くの観光客で賑わっていて、平日なのに市場の周りの無料駐車場に一台の空きのないのには驚いた。空き待ちで並んでいる車のナンバーを見たら、山梨、横浜、岐阜とそろって遠方だ。
「どこにする?」
「市場の食堂、ちょっと見てみよう」
十七年前に新設された“魚市場INO”には一度も行ったことがなかった。水揚げ場を見下ろす二階の通路を進むと、突き当りに三つの飲食店があったが、女房の好みではなかったようで、結局何度か利用したことのある“千本一”へときびすをかえす。到着すると千本一は満席で、韓国訛りの男性スタッフに、向かいの姉妹店“かもめ丸”へ案内された。女房がマグロ刺身定食、私はアジの刺身定食を注文。すでにお腹はグーグー騒いでいる。
十分ほどで料理が運ばれてきた。
「ボリュームあるわね」
マグロも凄かったが、アジはそれを上回った。
「これ、刺身だけで腹いっぱいになりそう」
魚の王様はサバ、女王様はアジだと頑なに思っている私にとって、この定食はカウンターパンチだった。新鮮さを証明するぷりぷりした身の弾力は言うことなし。大根のつまといっしょに口へ運べば思わず笑みがこぼれる。税込み1,980円は安いと断言しよう。
「ねえ、来月来たときは磯焼がいいな」