夏が暑いのは当たり前だが、それにしても暑い。近所のスーパーへ買い物へ行くにも躊躇する熱波には困り果てる。
こんな酷暑の続くある休日、ふと四年前の夏を思い出した。
花の山“根子岳”を歩いてみようと、長野県の菅平高原へ旅した時のことだ。
菅平高原の標高は1500m前後あるので、日陰などに入ると、さすがに涼しい。また、ラグビーの合宿地として著名なところから、いたるところにグランドがあり、そこではごっついラガーマンたちが男臭さを放っている。
到着した日は登山口の下見と決めていたので、賑やかな目抜き通りを抜けて、更に上方の菅平牧場までPOLOを走らせた。
かなりな坂道を上がってきただけに、駐車場へ到着し、車から降りると、爽やかな空気感に包まれる。
周囲には多くの牛が放牧され、何とも牧歌的だ。
牧場を分けて伸びる道で、牛にレンズを向けていると、いつの間にか、若い母親と小学生と思しき男の子が、脇をすり抜け、ダボス牧場方面へと歩き去って行くところだった。
道の両側に密生している草むらも、強い日差しを浴び、色あせて見える。市街地と比べれば気温自体は低いのだろうが、直射日光の強さは肌に痛みを感じるほどで、拭っても拭っても汗は止まらず、車から降りて三十分もしないうちに喉はカラカラになった。
登山口から十五分ほど上っていくと、左手に東屋のある展望台が見えた。ベンチに腰掛け、まだ冷たさの残るポカリスエットで一服。それにしても、菅平高原全体を俯瞰できる絶景は見事の一言だ。
見えるわけはないのだが、そんな展望台から、ほとんど無意識のうちに、歩き去っていった親子の姿を探していた。