庶民的な楽しみ

 三月二十四日(木)。昼前になると気温が上がり始め、久々にいせやでビールでも飲もうかと、開店に合わせて出かけてみた。それと桜の開花状態もこの目で確かめておきたかった。
 頻発する地震、終わりの見えないコロナ禍、そして世界を震撼させたロシアによるウクライナ侵攻等々、暗澹たる出来事ばかりが続いているが、そんな中でも季節の移り変わりは確実にやってくる。
 
 七井橋通りは、相も変わらず賑やか。十二時十分前。いせやの店前には四人がすでに並んで開店を待っていた。彼らの後ろに並び、RXをショルダーバッグから取り出した。

 

 さっきからいせやの真ん前で数人の年配男性が輪になって何やらおしゃべりをしている。話の内容からしてどうやら待ち合わせらしい。言い出しっぺがまだ来ない、最近ゴルフは行ってるの、どこにしようか、ここでもいいけど待たなきゃだめだ、あと二人かい、遅いな等々、脈絡のない話が延々と続いている。しばらくすると、「どうもどうも」と最後の一人が到着。するとまもなくして全員で駅の方へ向かって歩きはじめた。
 何の変哲もないワンシーンだったが、春めいた空気感とやたらにマッチしているようで、思わずレンズを向けてしまった。RXのRAWデータは素晴らしくしっかりしているので、簡単なレタッチでも臨場感がよく出る。こんなフローでスナップをやっていくのも面白そうだ。
 ビール大瓶一本、生ビール中ジョッキ一杯、餃子一皿、焼き鳥四本、〆に焼きそばと、腹いっぱいおいしくいただいた。食事やアルコール摂取には気をかけなければならない年齢になってしまったが、こうしてほろ酔い加減で公園を歩き回り、気が向いたらカメラを取り出すという、至極庶民的な楽しみを当たり前のように行える幸せこそ最上のものではないかと、つくづく思うこの頃だ。

 桜の状態は開花寸前。すでに開花している木も多々あったが、まだ一分、二分咲きといったところ。この日も一眼レフを持つ女性を二人ほど見かけたが、スマホで始めたSNS投稿から、更なる撮影クオリティー向上を求めてだろう、皆さんいい機材を使っていた。ボート乗り場の近くで桜へレンズを向けていた女性は、惚れ惚れとするほど脇をきちっと締めた縦持ちの姿が目を引いた。この頃ではカメラの構え方等々をはじめ、撮影の基本などがYouTubeで分かりやすく解説されているから、向上心のある方なら短時間で撮影技術を習得することができるだろう。


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