工場夜景

1月16日(木)。昨日と較べ寒さも和らぎ、風もほとんど感じられない絶好のコンディデョンとなったので、予定していた夜景撮影へ出かけてみた。
以前から工業地帯の放つ巨大なエネルギー感には、少なからずの興味があった。古くはデニーズ時代、静岡で行われるエリア会議の帰り道、国一バイパスから見渡す富士の製紙工場群には毎度圧倒され、漆黒の闇に浮き上がる無数の灯り、煙突、クレーン、巨大な資材置き場等々には、生命感すら覚えてならなかった。
そしてつい先日。TV番組で京浜工業地帯の工場夜景クルーズとやらを放映していて、何気に目をやると次第にこれは是非一度現地へ行かねばと心が動き出したのだ。

訪れたのは、川崎にある<千鳥町貨物ヤード前>。ネットで調べると、ここは“工場夜景の聖地”とも呼ばれる所らしい。位置的には仕事で2~3度利用したことのある川崎陸運支局の目と鼻の先で、ちょうど千鳥運河を挟んだ対岸になる。
自宅からだと下道でも大凡1時間半あれば到着できる距離だ。
井の頭通り~環八~産業道路~R132と、最も分かりやすく単純なルートを選んだが、環八に入るといきなり渋滞で、出発は15時半だったが、到着すると17時半を回っていた。この季節で17時を過ぎれば完全に陽は落ちる。

R132から右折して工業地帯へ入り込むと、右側に化学工場群の建物と灯りが目に飛び込んできた。想像していた以上の迫力に暫し圧倒されるが、この別世界に紛れ込んだような雰囲気は、無性に感性を煽ってくるのだ。

踏切の傍へ車を停めて、早速辺りの下見を開始した。
すぐ近くは海だが、風は殆どなく、また肌寒さも感じられなかったので、腰を据えて撮影に集中できそうだ。
手始めは踏切から行おうと、一式を担いで近づくと、おっとどっこい、先客がいた。しかも女性である。見れば近頃流行りのミラーレス一眼をしっかりと三脚に装着して、真剣な眼差しでモニターを見つめている。
会釈されたのでこちらも会釈を返した。
ここは一旦踏切から離れて、道路の反対側へ渡り、工場群全体を狙ってみた。
ところがこの時、大事なものを忘れたことに気が付いた。それはライトである。何せ真っ暗闇なので、カメラにリモートコードを取り付けようにも、受け穴の位置が分かり辛く思うように刺さらないのだ。首から下げる小型のマグライトがあれば何の問題もなかっただろうに。
因みに、今回の機材は機材はD600+Nikkor24-120mm。初めての撮影場所に対しては無難であり最も機動力を発揮する組み合わせだ。
2~3枚撮ってモニターしてから+0.3ほどの露出補正を施す。初期設定は絞り優先オートで絞りはF16、ISOは100、補正は±0。被写体にもよるが、これでシャッタースピードは15秒から20秒ほどになるので、三脚の固定はしっかり確認しなければならない。予想に反して車の往来が頻繁にあり、結果としてヘッドライトやテールライトが光の帯となり、動きのあるアクセントとなった。

「頑張ってくださいね」

突然背後から声を掛けられ、慌てて振り向くと、70歳くらいだろうか、三脚を抱えた年配のご主人が微笑みながら通り抜けていった。やはりここは人気の夜景スポットなのだろう。この他にも、突然車が止まったと思ったら、若い女性が降りてきて、スマホで工場を撮るとまたすぐ車に乗り込み走り去っていった。
撮影枚数を確認すると50枚を超えていたので、私もそろそろ戻ることにした。

夜の工場という被写体を間近でじっくりと観察したわけだが、これは癖になりそうだ。初のトライにもかかわらず、工場の持つパワー感をそのまま切り取ることができた嬉しさはこの上ない。
次回はもうちょっと足を伸ばして、横浜の工場夜景をタムロンの70-300mmでキリリと撮り上げようかと、既に計画を練り始めている。


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