デジイチ考

私の仕事は中古オートバイの仕入れ並びに販売である。
メインで扱っている車種は米国のHarley-Davidsonだが、この他イタリアのDUCATIも得意のジャンルで、私的には最も好きなメーカーになる。業界歴30年の目線で沿革を振り返れば、販売や訴求の方法は時代の流れと共に大きく様変わりした。
街道沿いに店を構えたら、店前を通る車や通行人の目に留まるよう、創意工夫した看板やプライスカードを掲示、更には“オートバイ”や“モーターサイクリスト”等の有力バイク雑誌にショップ広告を掲載と、こんな流れが業界へ足を踏み入れた頃からの一般的なバイクショップの訴求パターンだった。
しかし10年ほど前から雑誌離れが急速に加速し始めると、それに取って代わるようにネット戦略が中心となってきた。自社のHP設置はもちろんのこと、GooBike.com等々、人気のバイク販売サイトに多くの車両を掲載し、近隣だけではなく、全国津々浦々をターゲットとしたビジネスへと変化していったのだ。
掲載に際して最も気を遣うのが価格設定。各社の提示価格を研究して相場を掌握、それを元にお値打ち感溢れる価格を提示することにより、お気に入りリストへ入れてもらえる可能性を高めていくのだ。しかし第一印象を決めるのは価格だけではない。次に大切なのは購入者の目を引くQualityの高い写真である。
うちのウェブサイトへ掲載する写真は、これまで全て私が撮ってきた。コンデジで簡単にちゃっちゃと済ましてはいない。最もきれいに写る時間帯を選び、カメラはデジイチと拘り、最後は必ずレタッチを施す。人間の心理というものは、価格や車両のコンディションが同じだったら、必ず見栄えのいい方を選ぶのだ。
その仕事用デジイチがついこの間不調になり、仕方がないので中古品だが新たなものを導入した。
新たなものとは“ニコンD7000”、そして不調になったのは“キヤノンEOS10D”である。
まずは下の票をご覧あれ。

キヤノン EOS 10Dニコン D7000
発売日2003年3月2010年10月
有効画素数630万画素1,620万画素
撮像画面サイズ22.7×15.1mm23.6×15.6mm
JPEG-Lサイズ3,072×2,0484,928×3,264
ファインダー視野率95%100%
液晶モニター1.8型TFT3.0型TFT
連続撮影速度3コマ/秒6コマ/秒

明らかにスペックの差は歴然だ。
元々キヤノン10Dは、ライバルメーカーであるニコンの人気デジイチD100に矛先を向けた意欲作だった。しかしそれは16年も昔の話。そこから7年の歳月を経て発売されたD7000には、トータル性能で到底及ぶものではない。
ところがD7000を導入して早速使ってみると、何やら画が不自然。
どこが不自然かと言えば、ホワイトバランスなのだ。
設定はオートになっているが、作られる画の色温度が若干高めに出て、見た目6000K以上あるような青味が薄っすらと掛かってしまう。取りあえずオートホワイトバランスの調整機能を使って補正すると、一応自然な色味に改善された。恐らく個体の問題という可能性も考えられるので、これでD7000云々言うつもりは毛頭ない。
レンズはAF-S 18-55mm 3.5-5.6Gを使用、合焦もスムーズで且つ精度も高いから、実にストレスのない撮影が可能になった。これで仕事も捗るというもの。
まっ、それはさておき、今回の一件で改めて気が付いたことがある。
D7000の合焦やレリーズのレスポンスは非常に素晴らしく、小気味よい操作感はリズミカルな撮影を可能にさせる。この機械的性能は一朝一夕で成せるものではなく、さすがに7年の差だと頷けた。
しかしカメラから吐き出す画については、それほどの差は感じとれないのが正直なところ。モニター上で見る限り、確かに解像感はD7000が上だが、自然でニュートラルな10Dの画も捨てがたい。

こうなると性能の差というより好みの差と言った方がいいかもしれない。
実は10Dの前は、長らくニコンのCoolPix5000を使っていたのだが、合焦と読み込みの遅さに仕事用としては多分にかったるさを感じていた。そんな時、ちょうどキヤノンからニコンへと機種替えを果たしたTくんにお願いして、使わなくなった10Dを譲り受けたのだ。
コンデジながら限りなくデジイチに近い性能を謳っていた5000だったが、10Dで撮影した画を一目見れば、その立体感のリアルさに格の違いを思い知らされる。
10Dより更に古く、既に古典の仲間入りをしたニコンのD1でさえ、webサイトやインスタだったら何ら問題のないレベルの画を出してくれる。
高画素、連写、レリーズレスポンス、高ISO、ライブビュー等々、昨今のデジイチのボディー性能は実にウェルカムな進化を遂げているが、そんな性能を必要としない方々には、古いモデルを中古で購入することも一考だ。なんと言ってもリーズナブルだし、逆に今の高画素機では得られない温かみのある画に感動する可能性もあるからだ。
ニコンオリジナルのイメージセンサー“LBキャスト”を搭載したD2Hは今でも現役で使っているが、410万画素を忘れさせるナチュラルな画は最高のお気に入り。このモデルの発売も10Dと同年、2003年11月である。


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