庄や 飛田給店

昼休みのオアシス【庄や 飛田給店】が今月28日をもって閉店する。
思い起こせば3年前。ワンコインランチの看板に惹かれて、何気にのれんを潜ってみると、

「おっ、ここ、いいじゃん」

と、予想外な寛ぎ空間に魅了され、早速お気に入りの店として足繁く通うことになった。
サラリーマンにとってワンコイン、つまり500円ぽっきりで昼食を取れるのはありがたい。庄やの従業員に聞くと、ワンコインの始まりは“まかないメニュー”とのこと。毎日2品が日替わりになる提供方法なので飽きることがなく、寧ろ「今日は何か」と楽しみだ。
定番メニューである「カレー」には、鶏の唐揚げや一口カツがトッピングされ、しかもご飯の量が多いから若い人達には嬉しい一品。その他、ブリやマグロをさいの目切りにし、ゴマ油で和えた「変わり丼」。体が温まる「モツ煮」、「肉豆腐」。見かけゴージャスな「ブリ丼」、「二色丼」。ちょっと一杯やりたくなる「マグロの竜田揚げ」等々、食欲をそそるメニューがこれでもかと出てくる。
庄やへ行くときは基本的に一人なので、大概はカウンター席を利用する。左右を見回せば、座っているのは馴染みの客ばかり。常連の止まり木とはよく言ったもの。
そして殆ど毎日、何年も通っていれば、従業員達とも顔馴染みになる。
店へ入れば、何を言わずともカウンターへ案内され、

「今日はどちらにします?」
「じゃ、肉豆腐で」

と、こんな感じだ。
庄やのホール係は30~40歳代の女性が中心。ランチは大体3名で回しているようだが、味の素スタジアムでイベントある週末には、これに2~3名ほど増員される。
ランチしか利用したことのない私の目から見れば、なぜこの店が閉店するのか大いに疑問だった。いつ利用しても客入りは上々、店全体の活況も申し分ない。「なんで?」と従業員に投げかけると、肝心な夜の売上が低調だからとの答えが返ってきた。庄やはもともと居酒屋チェーンなので、確かにその辺の客入りが見込めなければ営業の続行は難しいかもしれない。
庄やチェーンの経営陣だって、昨今の“外飲み離れ”の現況は憂虞していることと思う。恐らくランチサービスはこれに対する苦肉の補助策なのだろう。
< 業績悪化又は単純に売上アップ ⇒ 営業時間延長 >
この方程式は飲食店チェーンが古くから使う常套手段だ。
居酒屋でランチを行なえば、新規客の開発や店の知名度アップにはそこそこの成果を生むかもしれないが、反面、客単価は確実に落ち込み、利益率は悪化する。ワンコインランチそのものが薄利だし、それにも況して飲食業は労働集約型の典型的な業態なので、店の運営には頭数確保が必須。つまり人件費を絞るわけにはいかないから、どのように試算してもランチで収益カバーとは成り得ないのだ。

何れにしてもツーカーで寛げる店が無くなるのは寂しいかぎり。
但、飲食業は経営の浮き沈みと従業員の入れ替わりが激しい最たる業界であり、堅調な個人経営店でもない限り、客が安心して長らく利用し続けることは正直難しい。


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