連泊はもちろんだが、日帰りでも楽しいのが旅だ。知らない街を散策したり、美しい景色を眺めたりと、魅力を挙げればきりがないが、中でも欠かせないのは食事時だろう。何気に入った食堂で唸る一品に出あえばそれだけでハッピーだし、更に店の雰囲気や店員の対応も自分好みだったら、旅そのものの充実感は大きく膨らんでいく。
好きで良く出かける伊豆半島には、海の幸を食べさせる飲食店が星の数ほどあるのは周知のとおり。正直どこへ入ったらいいものかと迷ってしまうほどだ。そんな中、半島の先端、石廊崎にある網船納屋(あんぶねなんや)は幾度も利用するお気に入りの店。注文するのは大概刺身3品盛りの“地魚刺身定食”で、取り立て大きな特長はないものの、刺身、味噌汁、御飯、漬け物、小鉢、そしてお茶等々、どれもきちんと手が入り、定食ならではの味わいを楽しめる。
メインの刺身がいくら新鮮でも、御飯が軟らかすぎたり味噌汁のダシがイマイチでは、食事の価値は萎んでしまう。
もう一つのお気に入りは、“最果て”という言葉が当てはまるロケーションにある。
伊豆半島最南端の石廊崎は目と鼻の先であり、特に店から坂を下った先の石廊崎港は、山々に囲まれた奥深い入江に位置するという、回りの漁港にはない珍しい景観と静かな佇まいで、“最果て”の演出を大いに盛り上げている。
美味しい料理を落ち着ける環境でゆっくりと味わえたならば、それまでに書き留めたメモをまとめ、午後からの計画を練り直したりと、旅の充実度はますます深まっていくのだ。