エレキバンド・その8・A Hard Road

hardroad中学3年へ進級すると、それまで都内の中学校へ通っていたカズちゃんが武蔵野五中へ転校してきた。
しかもクラスがいっしょになった。
友達同士、青春を謳歌するには最高のお膳立てだ。
学校で、家で、ところかまわずのお喋りの花。これは楽しい。
ましてクラスメイトの女子話とくれば、ぎんぎんに盛り上がる。はっきり言って止まらない。
今思い出しても、よくあれだけ話題が出てきたと不思議に思う。
但、私もカズちゃんも中学生までは恋の全てが片思い。イマジネーションを越えることのない恋心は、制限なく膨らみ続け、憶測だけの一喜一憂は切ないばかりのエンドレスストーリーを生み出すのだ。

「好きな子いる?」
「自分から言えよ」

こんなやりとりだけで脈拍は上がり、顔が火照る。
あの頃は真剣そのものだったが、今となれば懐かしい思い出だ。

さて、譜面はもとより、ブルースのブの字も知らなかった私は、ひたすらレコードを聴いて耳を馴染ませていった。フレーズを頭にたたき込まなければアドリブの練習は始まらない。
そんなある日、3コード進行に沿って指を動かしてみると、たどたどしくも即興演奏風に聞こえるようになってきた。やっとの前進に嬉しさ爆発である。
覚えたフレーズを適当につなぎ合わせ、それに若干のアレンジを加えていくというものだが、内容はさておき、“自分なり”を少しでも加味できたことは自信に繋がった。
特にチョーキングとビブラートを適所に使えば、更に“らしく”なることを練習の過程で身につけた。
当時巷で流行っていたブルースとは、俗に言うブルースロック、ブリティッシュブルースというカテゴリーで、本場アメリカ南部の“こてこてブルース”とは、基本こそ同じであっても、方向性や演奏方法は異なった。アコースティックギターで渋く弦をはじき、かれた声で語るように歌うより、ハイパワーアンプでディストーションを効かせ、シャウトで迫るスタイルの方が単純にリスナーを歓喜させられるし、何よりステージ映えがする。
ブルースロックに明るくなければ、現代音楽を語れないほどのブームが到来し、クリームやジミ・ヘンドリックス等々はいつしか神格化されるまでになった。
私はブリティッシュブルースの雄、ジョン・メイオール&ブルースブレーカーズに所属する歴代のギタリストに興味を覚えた。
中でも、後にフリートウッドマックを結成することになる、ピーター・グリーンの渋く重いフレーズはピカイチに惹かれた。彼がプレイしたアルバム『A Hard Road』は、それこそすり切れるほど聴いたものだ。彼のギタースタイルがよく分かる“The Stumble”は、エリック・クラプトンの“Crossroads”と並んで、ギター小僧達の必須練習曲である。もちろんブルースブレーカーズ時代のエリック・クラプトンも素晴らしかったが、ここはやはり好みの差だ。


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